大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)2687号 判決

弁護人控訴趣意第二点(証拠能力のない証拠によつて事実認定をした違法)について。

医師の作成する診断書は刑事訴訟法第三百二十一条第四項の鑑定書に準ずべき書面と解すべきところ、記録を精査すると、所論の医師兼巻和一作成名義の小栗友好に対する診断書は、既に第一点において説明したとおり、検察官からその証拠調の請求が為され、被告人及び弁護人から刑事訴訟法第三百二十六条にもとずく証拠とすることの同意があり、原審において適式な証拠調が履践されたのであるから、証拠能力を有するものと解するに何等の妨げもない。ただ、右診断書は、医師兼巻和一名義で作成されたものであるが、同人は小栗友好を直接診断したものでなく、同人の経営にかかる医院で代診として使用していた医師窪田博吉が、小栗友好を診断し、右診断書の内容のような部位にその記載の程度の傷を認め、右診断書を自己の勤務する医院の経営者である医師兼巻和一名義で作成し、これを診療簿に記載し、後に兼巻和一に報告したことが認められるので(原審第二回公判調書中証人兼巻和一の供述記載、同第四回公判調書中証人関行道の供述記載、同第六回公判調書中証人窪田博吉の供述調書の記載を総合することによつてこれを認め得る。)刑事訴訟法上医師兼巻和一自身の診断の結果を記載したものとしての実質的証拠価値を持たないことはいうまでもないところであるが、全然証拠能力を欠き、又は証拠価値を有しないものではなく、同人の代診をした医師窪田博吉の診断の結果を記載した証拠書類としての証拠価値を有するものと認むべきである。蓋し代診として医院に勤務する医師は同医院の職員として診療に従事するのであつて、診断書を同医院経営者の名義をもつて作成したとしても、右書面が偽造文書その他違法な文書となるものとも解し難く、従つて、右診断書は適法な文書であると解せられるからである。それ故、右診断書の作成者は医師窪田博吉であると認むべく、同人の診断書として、証拠能力を有し、且つその記載内容に応じた証拠価値を持つものと認められるから、右診断書に証拠能力がないことを前提とする所論は失当である。論旨は理由がない。

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